敷地集約の意義薄れた変更計画

北九州市小倉北区の小倉駅南口東地区で建設予定の再開発ビルが、業務床を主体としたオフィスビルから上層部を住宅とする複合ビルに計画変更となったのは既報の通りである。今回の変更について、多くの人々が単にオフィス部分を削って上にマンションを載せたものを想像したらしく、そのようなCGを作成してインターネット上に披露する人も居たようだが、計画内容はそれらと異なるものになる。

同地区の都市計画変更計画原案が2日より縦覧を開始しているが、変更内容は次の通りである(赤字が変更箇所)。

  1. 名称:小倉駅南口東地区第一種市街地再開発事業
  2. 施行区域面積:約0.6ヘクタール
  3. 公共施設の配置および規模
    • 道路拡幅
      • 幹線街路 博労町線:幅員22 – 27メートル、延長約80メートル
      • 区画道路 京町17号線:幅員11メートル、延長約40メートル
    • 路線変更
      • 区画道路 京町16号線:路線終点変更
    • 駅前広場拡幅
      • 8号線:約200平米
  4. 建築物の整備に関する方針
    • 建築面積:約3300平米
    • 延べ面積:約3万6000平米(変更前:約3万9000平米)
      • うち容積対象:約2万6000平米(変更前:約3万6000平米)
    • 建ぺい率:約90パーセント
    • 容積率:約700パーセント(変更前:900パーセント)
    • 主要用途:業務施設、商業施設、公益施設(交番)、駐車場、住宅
    • 駐車台数:約370台(変更前:約160台)
    • 施行区域:約0.6ヘクタール
  5. 都市再生特別地区の制限内容
    • 容積率の最高限度:700パーセント(変更前:900パーセント)
    • 容積率の最低限度:500パーセント
    • 建ぺい率の最高限度:90パーセント
    • 高さの最高限度:GL+95.0メートル(変更前:GL+74.0メートル)
    • 建築面積の最低限度:10000平米
    • 壁面の位置の制限設定
  6. 建築敷地の整備に関する計画
    • 敷地内にゆとりある歩行者空間を確保するために歩道と一体化した公開空地を敷地周辺部に整備する。
    • 1階部分に駅前広場と区画道路とを結ぶ自由通路を設ける。
  7. 住宅建築の目標:約100戸(変更前:0戸)、約1万1000平米(変更前:0平米)

注目してほしいのは延べ面積の部分。階数は21階に増えたにもかかわらず、面積は僅かに減少している。このようなことになるのは、建物の幅を細くしたからである。細くなった建物は敷地南側の都市計画道路博労町線側に寄って建つ、いわゆる板チョコ型のビルとなる。空いた鹿児島本線側には低層の立体駐車場を配置する。したがって、これらの完成後、小倉駅から南に出て左を向けば、立体駐車場と細長い複合ビルが目に飛び込んでくる格好になる。

同じ関門都市圏で、面積をそのままに幅を減らして上に積み上げた事例がある。門司港地域のランドマークとして知られる門司港レトロハイマートは、当初15階建ての標準的な中層マンションとして計画されたものであったが、関門海峡地域の景観に配慮して幅を半分に、高さを倍にして現在の姿となった。門司港の事例には、景観を守るという大義名分が存在した。では小倉駅前でビルの幅を半分にしなければならないような理由はあるのか。

北九州は市域の端から端まで市街地が広がり、人口あたりの市街地面積は政令指定都市で最も広い。一方、小倉の都心部は、戦火を免れた城下町由来の狭小な街区のために土地の高度利用が物理的に阻まれている。これを解消し、大区画の土地と建物を提供可能とするのが市街地再開発事業で、例えば小倉駅前東地区(セントシティ北九州=現コレット)では、4つの街区を纏めて敷地中央に巨大なビルを建てた。

現在の小倉駅南口東地区は、駅前広場から区画道路(京町16号線)が伸び、わずか20メートルほどの幅で街区が分断されている。再開発ではこの区画道路を廃止し、南北併せておよそ60メートル四方の土地を提供する。大区画の敷地を目一杯に活用するのが当初計画だったが、これに地元の米原校区自治連合会が文句を付けた。駅前に繋がる区画道路がなくなれば、その裏側では商売が成り立たなくなるから、ビルの真ん中にトンネルを通せというのが彼らの主張だった。

トンネルを巡って揉めた挙句、ようやく都市計画決定に漕ぎ着けたのは準備組合から7年が経過した平成19年10月。翌年発生したリーマンショックに端を発する世界同時不況の中で不動産市況が大幅に悪化し、保留床を取得する予定だったデベロッパーは引き揚げた。それから4年後、変更計画の「自由通路」は建物を2つに分け、実質的な区画道路として生き残った。皆の期待を集めた小倉駅南口東地区は、エゴイズムに屈服し、変貌してしまった。


追記: 翌年の新計画において、自由通路は再び建物内に取り込まれ駅前広場に面する建物の細分化は回避された。→「小倉駅前に24階建て複合ビル 事業再構築で建物細分化は回避

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