実現へ機運高まる関門海峡道路

九州経済連合会(九経連、福岡市中央区)は、同会の関門海峡道路建設促進協議会がこれまでに実施してきた関門海峡道路に関する調査の報告書を公開した。昨年以来、同道路の建設実現に向けた機運が高まっていることから、報告書の公開で一般市民へ周知したい考えだ。

公開された報告書は「関門トンネル・関門橋の交通遮断に伴う経済損失影響に関する報告書」(22年2月)、「関門海峡道路の必要性に関する基礎調査」(23年3月)、「関門海峡道路に関する調査(調査報告書)」(24年3月)の3種と、これらの概要を纏めた「関門海峡道路に関するこれまでの協議会調査について」(25年7月)。

「関門トンネル・関門橋の交通遮断に伴う経済損失影響に関する報告書」は、現ルートが遮断された場合の経済損失を想定したもので、今年6月に産経新聞が報じている。この報告書では、何らかの形で関門橋と関門トンネルが遮断された際、1年間に間接被害のみで約14兆円の経済損失が発生するとした。この調査の1年後に発生した東日本大震災の経済損失が16から177兆円程度と推計されることもあり、リダンダンシー(二重性)の確保の観点から新ルートの必要性を主張する際には非常に訴求力のある数字だ。

ただ、リダンダンシーの確保という視点は、いわば国の予算を引っ張るための口実のようなもので、地元への訴求力に欠けていた。そこで、23年以降は、三菱総合研究所に依頼して作成したのが「関門海峡道路の必要性に関する基礎調査」と「関門海峡道路に関する調査(調査報告書)」だ。これらでは、新ルートの都市内連絡道路としての必要性を調査した。

関門海峡を関門地域の中心部を流れる延長19キロメートル、川幅700メートルから2000メートルの河川と見立て、市街地の橋に関門橋と関門トンネルの2本しか連絡手段のない状況として、同様に川幅1キロメートル程度の河川で市街地が分断された新潟市(信濃川)、徳島市(吉野川)、焼津市(大井川)、久留米市(筑後川)、足立区(荒川)との比較検討を行った。

調査の結果、河川の両岸を結ぶ橋梁やトンネルには、都市内における移動や土地利用の分断による制約を解消する役割があるとし、約1キロメートルごとに橋梁が架かる他都市と比較して、現在の関門地域では両岸の一体的な発展が損なわれているとした。

関門海峡道路は、かつて凍結された海峡横断プロジェクトのひとつに含まれていたことから、現在でも反対派の「無駄事業」批判を浴びている。しかし、文字通り必要性に欠ける他の事業と異なり、関門海峡道路は、人口約1300万人の九州と本州を結ぶ代替路としての役割に、関門大都市圏の市街地内道路としての意味もある。

事業費は総額で1千数百億円程度が見込まれるが、地元にもたらされる経済効果はこの建設費を除外しても2千億円を超えるとの試算もある。

新ルートにより通過都市化が加速するとの意見は、全く見当違いである。現行ルートは関門地域の中心部を迂回する、バイパス道路の状態であり関門の通過都市化を促したのは事実であるが、新ルートは両岸の都心部を直結し、むしろ関門の拠点性を高めることになるのは地図を見れば一目瞭然である。

国土交通省は、一度凍結した事業ということもあってか、中々腰を上げる気配を見せていない。地元に必要な事業であり、負担が不可能な金額ではないなのだから、補助事業で事業化してしまうという手もある。これまで国の動きを待ち続けて何も進まなかった経緯を振り返って、思い切った決断も必要であろう。


追記:
記事本文中に「関門海峡道路」とありますが、推進主体側では現在、呼称を「下関北九州道路」に統一・変更しています。記事執筆時の用語であることにご注意ください。(平成28年1月22日 宇部ジャーナル)

(記事編集:

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