宇部市の市街地再開発事業 悪条件の認識はあるか

宇部市は、JR宇部新川駅周辺地区で市街地再開発事業の実施を促す為、昨年度から国の補助を受け、地権者による事業計画策定作業の支援を実施している。駅周辺整備に伴う市の公共投資に続く形で、「民間投資」による土地利用の高度化を図る考えだ。

市街地再開発事業は、市街地にある一定規模の敷地を共同化し、土地所有者の権利を再開発ビル内の「権利床」に置き換えて新たな施設を整備するもので、国や自治体から一定の補助を受られる。権利床以外に生み出された「保留床」の売却益等を事業費に充てる。

保留床は、オフィスや商業施設、ホテル、マンション等として整備し、民間業者に売却する場合や、需要が限られる地方都市では自治体が取得して図書館等の公共施設を入居させる場合もある。建物内に土地所有者の権利が残るため、事業実施は権利者の合意形成が前提となる。

同じ面積の土地でも、道路の幅や周辺の環境によって評価は異なる為、個々の土地が狭く地権者が多いほど再開発ビル内の権利床が複雑となる為、合意形成は困難を極める。施設整備が実現した後も、権利関係の問題から「廃墟」状態に陥るビルもある。

このような性質もあって、宇部市で市街地再開発事業による施設整備が実現した例はない。過去、新天町一丁目西地区で市街地再開発事業の実施が計画され、百貨店やオフィスビル、立体駐車場等を整備する「基本計画」の策定までは進んだが、最終的に頓挫している。

細江地区12街区の再開発ビル(下関市)

細江地区12街区の再開発ビル(下関市)

宇部市の周辺では直近10年間に、下関市の細江地区12街区や防府市の防府駅てんじんぐち地区等で、市街地再開発事業による施設整備の実績がある。しかし、実施地区に近い下関駅や防府駅の利用者数はそれぞれ宇部新川駅の約12倍、約4倍であり、事業環境が全く異なる。

また、いずれも土地区画整理事業と一体的に実施されたこともあり、地権者の事業意欲が高かった。細江地区12街区は商業施設のシーモール下関に隣接し権利者が少ない、防府駅てんじんぐち地区は敷地の半分近くが公有地で市立図書館が入居、と好条件も重なった。

宇部新川駅周辺の場合、駅南側の街区には、土地区画整理事業が実施されず、戦前からの複雑な権利関係をそのまま引き継いでいる土地が多い。実施済み地区も事業後数十年を経て、住宅や商店として土地利用が定着し、事業の機運は高まっていない。まとまった公有地もない。

駅周辺に商業施設やオフィスビルといった都市機能が一定程度集積していた下関や防府では、市街地再開発事業で機能を「補完」した。宇部市中心市街地の都市機能は常盤通り地区に集中しつつあり、宇部新川駅周辺地区は機能の「創出」に近い試みとなる。

厳しい前提条件の中、市の施設整備が「民間投資」に結びつくかは不透明だ。下関や防府と同じ感覚で作業を進めた結果、「公共投資」だけで終わり成果は無かった、では済まされない。現状は「不便な立地」であることを認識した上で取り組む必要がある。


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